高齢者ドライバー問題において、地方自治体で出来ることを考えてみた。


1.高齢者ドライバー問題の実態
「高齢者ドライバーが引き起こす交通事故」問題。「高齢者ドライバー問題」として、昨年頻繁にニュースで取り上げられました。事故で被害にあった方々のことを思うと、非常に胸が痛くなります。

私の住む神流町では、高齢化率が57%を超えており、75歳以上で車を運転する方も見られるため、「高齢者ドライバー問題」について取り組まなくてはいけない問題だと私は考えています。

そんなとき、昨日、以下の記事を見つけたのでご紹介します。

高齢者による交通事故 免許を返納すれば済む問題なのか
(THE PAGEより)

上記の記事で私が「良い」と思ったのは、「高齢者ドライバー問題」を、決して「ニュース」による印象を受けて分析するのではなく、「データ」にもとづいた分析が行われているところです。

この記事によると、「高齢者ドライバー問題」がニュースにとりあげられることで、「高齢者が引き起こす交通事故」が件数として最も多い印象を受けがちですが、データとして調べてみると最も交通事故が多いのは「10代」であるということが明確に分かります。しかも、交通事故の総件数自体は、年々減少しているのです。(以下の図を参照)


図1 交通事故における第一当事者(事故を起こした人の中で最も責任が重い人)を年代別に分けて、さらに年代ごとの免許保有者10万人あたりでどれくらい交通事故を起こしているのかを表したグラフ
(出典「高齢者による交通事故 免許を返納すれば済む問題なのか」より)

そのため、「高齢者ドライバー問題」が一見多く発生しているように印象を受けるのは、「件数」が多いのではなく、単にマスコミで多く取り上げているだけだということが分かります。

2.高齢者が引き起こす交通事故の原因

図2 2001年末と2015年末時点での免許保有者を年代別に分けたグラフ
(出典「高齢者による交通事故 免許を返納すれば済む問題なのか」より)

ただ、高齢者のドライバーが今後増えることは、超高齢化社会に突入した日本において明確な事実です。上の図では、2001年と2015年の免許保有者を年代別に分けたものですが、14年間の間に、60歳以上の免許保有者の割合が飛躍的に増えていることが分かります。今後も高齢化が進む日本において、今後も高齢者のドライバーが増え続け、高齢者のドライバーへの対応を考えなくてはいけません。

そのため、高齢者のドライバーが引き起こす交通事故の原因について調べてみると、75歳以上の年代では「ペダルの踏み間違い」が最も多いことが分かります。(以下の図を参照)


図3 交通事故を4つの「動作ごと」に分けて、さらに年齢ごとに分けたグラフ
(出典「高齢者による交通事故 免許を返納すれば済む問題なのか」より)

そこで、「ペダルの踏み間違い」への対応を考える必要があります。

3.地方自治体として行うべき対応策
これまでの原因の分析から地方自治体として行うべき対応策を「短期」「長期」の視点で考えてみました。

①短期
・「ペダルの踏み間違い」防止器具を高齢者世帯に配布(もしくは購入補助)
・交通事故防止のための啓発活動

②長期
・企業・国と提携した「自動運転」などの最新技術の開発、制度整備の協力
・国・業界団体と提携した「運転免許の年齢上限」の設定のための法律改正

「短期」的に取り組むべき対応策は、費用が高額にならず、単一の自治体でも取り組みやすいものを分類しました。

「長期」的に取り組むべき対応策は、単一の自治体で取り組むことはできないものであり、「時間」「コスト」、そして「技術」的にも難しいものを分類しています。「高齢者ドライバー問題」の対応策として「自動運転」に対する期待は高いのですが、実用化するにはここ1~2年でできるというものではありません。時間をかけて整備し、制度も議論して作り上げる必要があります。

「高齢者ドライバー問題」というと、すぐに「免許返納」「年齢上限設定」という意見が出てきますが、整理して考える必要があるということを、今回参照した「高齢者による交通事故 免許を返納すれば済む問題なのか」記事を見てあらためてよく分かりました。地方自治に取り組む人には、ぜひ見てもらいたい記事です。