特養待機者が存在するにも関わらず、空きがあるという矛盾


今日の日経新聞に、以下の記事がありました。

足りない特養、実際には空き 首都圏で6000人分

(日経新聞より)

特別養護老人ホームは、行政の補助により整備する施設で、民間の施設よりも安価で入居できるところが多くなっています。

記事によると、首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)の特別養護老人ホームの稼働状況を調査したところ、6千床の空きがあることが分かったそうです。この空きの数は、特別養護老人ホームへの入居待ちをしている「特養待機者」6万5500人の9%強の数字とのことです。

待機者が存在するにも関わらず、空きがあるという矛盾が発生しているのです。

なぜこの矛盾が発生するのか。

理由は、以下のようになっていると記事では指摘しています。
1.介護人材の不足による受け入れ抑止
2.民間の介護施設との競合により民間へ入居者が流れる
3.行政側のニーズの読み誤り

まず、「1.介護人材の不足による受け入れ抑止」ですが、特別養護老人ホームの職員を募集しても十分な人数が集まらないことから、施設側で入居者を抑制しているという実情があります。

「2.民間の介護施設との競合により民間へ入居者が流れる」については、特別養護老人ホームを整備しようとしても、サービスが充実している民間の老人ホームに利用者が流れてしまう傾向にあるそうです。

「3.行政側のニーズの読み誤り」について、これまで特別養護老人ホームは公共性が高いため、低所得者を優先するという特徴があったのですが、近年は国が個室と共有スペースを組み合わせた「ユニット型」の施設を推奨していることから料金が高くなり、民間並みの料金を取る施設も増えてきているそうです。

こうした現時点で空きのある特別養護老人ホームですが、入居待機者が存在することを理由に、首都圏の行政側は特別養護老人ホームの増加を続けるという方向に向かっています。

待機者が存在するにも関わらず、施設に空きが存在するという矛盾に目を向けて、矛盾の解消に取り組まなければ増床しても矛盾が広がるばかりでしょう。